【ドイツ大学院出願】立志編⑤ なんのために留学に行くのか、吟味する
【ドイツ大学院出願】立志編③ 学位留学について情報を集めるでは、留学の無料相談に乗ってもらったという話をしました。私は、留学のコンサルタントだけではなく、指導教員や、大学院留学を経験している先輩などにも相談をし、それを自分の意思決定に生かしました。
今回はそれらの特に役に立ったと思われるアドバイスと、それが私の決断に与えた影響について語ります。また、その過程で、私が学位留学をする目的・理由が明確になっていったことをお伝えします。
前回の記事はこちらです。
どれくらい分野を絞ってプログラムを探せば良いか?
こちらは、アメリカで修士を取った先生と、所属大学の指導教員からアドバイスをいただきました。前者からは、
将来企業に行きたいか大学に残りたいか決まっていないなら、数学・統計学だけでなくデータサイエンスなど応用的な分野の修士課程にも出願してみたら良い。
とのアドバイスをいただきました。私は学部の所属が数学科だったことから、なんとなく大学院でも統計学の理論的な部分にフォーカスしたプログラムを探しがちでした。その方が、出願にも有利だろうと思ったからです。
しかし、このアドバイスによって、データサイエンスやScientific Computingなどの、理論と実践の両方を重視したプログラムを含めて探すようになりました。
実際にデータサイエンスの修士課程2つと、Scientific Computingの課程1つ、そして数理統計学の修士課程に1つに出願することにしました。
また、指導教員からは、
実際にそのプログラムに入って何をしたいのか明確にした上で、出願するプログラムを決めた方が良い。
というアドバイスをいただきました。私は学部時代に数学・統計学を学んできた中で、その他分野への応用に興味を持つようになりました。ですので、他分野(心理学・経済学・生命科学等)と結び付けてデータサイエンスを学ぶというコンセプトのプログラムを第一志望と第二志望に据えました。
個人的には、すでに修士課程に入学した今改めて考えると、この選択をして良かったと思います。なぜなら、結果的に私はデータサイエンスの、数学的・統計学的な理論の側面よりも、実際にコーディングをして、データを操作する方により強い興味があったからです。
定理の証明や、理論の部分を理解することももちろん重要ですが、私は自分で手を動かして、プログラムを組みながら、変数の挙動などをみながら理解するタイプだったようだと、今の修士課程に入学してから気づきました。
理論だけを学ぶよりは、理論と実践を組み合わせて学びたい、ということです。
国内大学院の入試を受けるべきか?
国内の大学院の院試を受けて、海外の大学院に進学するまでの間日本の修士に籍を置いたほうが良い。修士課程に在籍している方が、指導教員からの推薦状の説得力が上がる。奨学金や大学の選考の際、空白の期間があるよりは、修士課程に通っていた方が評価される。また、今は学部4年の冬に出願することを考えているだろうが、もし結果が振るわなかったら、修士1年の冬や修士2年の冬に出願しても良い。休学制度を活用して留学に行く手もあるし、総じて院試を受けた方が選択肢が増える。
とのアドバイスを頂きました。結局私は、院試の勉強にかける労力を考慮した上でも、国内の修士課程というプランBを確保しておきたいと思いました。交換留学の可能性もその時点では捨てていなかったという理由もあります。
また、実際に渡航した今振り返って考えてみても、この国内の修士課程という選択肢を残しておいて良かったと思っています。私は、国内の修士課程を受験するだけではなく、実際に入学し、ドイツの修士課程が始まるまでの半年間の間在籍していました。
さらに、ドイツの修士課程に進学した際も、国内の修士課程は退学するのではなく、休学という身分で学籍を残しておいています。休学は最長2年間できるので、その間であれば、ドイツの修士課程が嫌になったら・もしくは何かの事情で続けられなくなったら日本の修士課程に戻ってくることができます。
他の記事でも書いたように、ドイツの冬の気候は厳しく、特に1学期目は慣れないことも多く、精神的に不安定になることがそれなりの回数ありました。そんな時に、国内の修士課程という2番目の選択肢があったことは、私のメンタルヘルスの維持に大きく貢献していたと思います。
博士からの留学でも遅くないのでは?
こちらに関しては、ドイツの修士課程に留学中だった先輩からは、
海外で博士をとることを考えているなら尚更修士で出ていくと良い。博士に出願する際、同じ国の知り合いの教授のもとで学んでいた人の方が親近感が湧くし、繋がりも作れるから。
とおっしゃっていました。私は、修士課程のあとドイツやイギリスの博士課程に進みたいと考えているので、確かに修士から海外に出たら良いと思いました。また、アメリカで修士をとった先生からは、
博士に行くか迷っているなら、アメリカのPhDを勧める。初めの二年間を修了したら修士の学位ももらえるところが多いから。その時に研究を継続してPhDを取るか就職するか選べる。
とのアドバイスをいただきました。結局アメリカには進学しませんでしたが、こちらも参考になりました。最終的に、私は、博士への進学を見据えてコネクションを作りたいためと、もう少しコースワークを続けたいという理由で修士から留学することに決めました。
日本では修士課程は15単位くらい授業を受けて大部分を研究に費やしますが、ドイツを含む海外の修士課程の多くは、授業を大量に取ります。私は修士課程から若干専門を応用寄りに変更しようと思っていたので、コースワークで基礎から学べることはメリットでした。
「現状への不満」は動機として不十分では?
私が大学院留学をしたいという旨を指導教員に打ち明けた時、幸いなことに指導教員は親身に話を聞いてくれました。その中で、指導教員は、
あなたは何か今の環境に不満があるのか。
と尋ねてくださりました。私は日本で生きていて、また日本の理系学部に1割未満の女子学生として所属していて、生きづらいと感じることがそれなりにありました。だから、入学した時から留学を実現したいと思っていたこととは別に、今とは違う環境を選んでみたいと思っていました。そのことを打ち明けると、
現状に不満を抱いていることが成長の原動力になるので、そういう理由があるなら早く外に出て行ってみた方が良い。現状への不満も立派な動機だと思う。
と励ましてくれました。結果として、私は、「留学の夢を実現したい」という積極的な動機と、「現状に不満があり、違う環境を選びたい」というやや消極的な動機の二つに支えられて大学院留学の準備に取り掛かることになりました。
この、消極的な動機は、語学の地道な勉強をしていたときや、夥しい書類関係の手続きに追われていたときに特に支えになりました。
私の周りには、学部や学科が異なる人も含めて、海外の大学院に進学したいと思っている人はいませんでした。そして、海外の大学院に出願するためには、語学や成績の維持なども含めると数年かけて計画を進めなければなりません。
その計画を孤独に遂行するとき、私の場合は、「海外の大学院なんて合格できないんじゃないか」「他のみんなはこんな地道で孤独な作業なんてせずに、研究に専念しているのに」と思うことが少なからずありました。
その状況では、「留学の夢を実現したい」という積極的な動機だけでは、海外進学へのモチベーションを維持には不十分だったと思います。それだけでは、どこかでやめてしまっていたでしょう。「環境を変えたい」という消極的な動機があったからこそ、辛い時も頑張れました。
終わりに
これらの相談・アドバイスを経てもう一度留学の意義を考え直した結果、私は国内の修士課程の受験と並行して、学部時代より少々応用を志向した修士のプログラムを受験することにしました。また、異なる文化を持つ国に身を置いてみたいという思いを、出願の動機の一つに位置付けました。
色々な人から意見をもらい、自分の中で再考することを積み重ねて、自分が留学する動機をよりじっくりと考えることができたと思います。また、その過程を実際に留学を開始した今の自分が振り返ってみると、色々発見があります。立志編は一旦この記事で終わりです。
次回以降は、海外の大学院出願に向けて私が実際にやった出願のための手続きについて記事を書こうと思います。それでは!